りばーさいど てらす
思い出の絵葉書 (5)

「友達のニクソン大統領、今日来ないの?」ママさんは優しく尋ねてくれた。着物を着て下駄を履き、髪を束ねて髷を結っている。彼女は年寄りのお客さんの肩をそっと撫でて送りだす。
公園の奥深く取り残 された二軒の家。その横にたたずむ崩れかかった桜の巨木の下に椅子とテーブルがいくつか置かれ、自動販売機が数台並んでいる。客はセルフサービスで飲み物を買う。りばーさいど・てらすはそんなレストラン。まわりは 緑一色。向こうに小川、こっちには静かな池。
午後になるとお年寄りの常連客が自転車を止め、アルミ製の赤い色の長テーブルを囲んで、ビールや酒を飲み、将棋をしたり世間話をしている。後ろの家の壁には一面のフレスコ画。海の中の世界。アダムがシスティーナ礼拝堂からここに来ている。でも、創造主の神にかわって可愛い人魚が座り、髪を指で梳かしている。そして、天使ではなく河童の子どもたちが泳いでいる。エヴァが楽園でもいだあの林檎の実と戯れて。
そよ風が心地よく吹く。僕はコカコーラのパラソルの下、いつものアイスココアをすする。苔むした幹の美しい桜の巨木に目を休める。
「まるで踊っているようだね」
長い間があき、やっと返事が返ってくる。
「バレリーナ。桜の木の精。仰向けになって両足を上げてる。ほーら空に向かって。」

「友達のニクソン大統領、今日来ないの?」ママさんは優しく尋ねてくれた。着物を着て下駄を履き、髪を束ねて髷を結っている。彼女は年寄りのお客さんの肩をそっと撫でて送りだす。
公園の奥深く取り残 された二軒の家。その横にたたずむ崩れかかった桜の巨木の下に椅子とテーブルがいくつか置かれ、自動販売機が数台並んでいる。客はセルフサービスで飲み物を買う。りばーさいど・てらすはそんなレストラン。まわりは 緑一色。向こうに小川、こっちには静かな池。
午後になるとお年寄りの常連客が自転車を止め、アルミ製の赤い色の長テーブルを囲んで、ビールや酒を飲み、将棋をしたり世間話をしている。後ろの家の壁には一面のフレスコ画。海の中の世界。アダムがシスティーナ礼拝堂からここに来ている。でも、創造主の神にかわって可愛い人魚が座り、髪を指で梳かしている。そして、天使ではなく河童の子どもたちが泳いでいる。エヴァが楽園でもいだあの林檎の実と戯れて。
そよ風が心地よく吹く。僕はコカコーラのパラソルの下、いつものアイスココアをすする。苔むした幹の美しい桜の巨木に目を休める。
「まるで踊っているようだね」
長い間があき、やっと返事が返ってくる。
「バレリーナ。桜の木の精。仰向けになって両足を上げてる。ほーら空に向かって。」
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