2001-11-30

青緑色

思い出の絵葉書   (7)




“プールでいつも「戦争と平和」を読んでいた青年”が、学生時代僕が好きだった小説に登場する。
このイメージはずっと僕の中に焼きついて離れなかった。贅沢そのもののイメージ─夏、水辺にいて
長編小説を読める平和。
 ボール遊びをしたり、プールに飛び込んだり、追いかけっこしたりする子どもたちの叫び声が聞こえてくる。お父さんの首にしがみついたり、浮き袋の上で揺られる幼い子供たちの歓声。本から目を上げないと、ここが僕が子供のころのプールでなく、和田堀公園のプールだということには気づかない。ロッカー室の木造の建物は青く塗られ、地面は芝でなく緑色のプラスチックが敷き詰められている。塀の向こうには永福町の家々と朱色の神社の建物。
 黄昏時、背泳ぎしながら空を眺め、古き楽園にいるように僕は浮かんでいる。