2001-03-14

思い出の絵葉書 (5)

六月   大学の教会


* 僕はデブレツェン大学の心理学科を卒業した。
 心理学科は本館にあったが、授業のほとんどは大学の横にあるプロテスタントの教会の、長いこと使われていなかった二つの部屋で行われていた。僕たちの小さな別世界。「教会に行くんだ」よく冗談っぽく言ったものだ。心理学の授業が教会で行われ、精神を扱う僕たちだけがそこに通う。それはどこか皮肉な感じがした。
 時は止まったように見え、当時の体制の未来は無限に続くように思えた。宗教の自由はなく、哲学はマルクス主義が無理矢理教えられていた。でも、大学では数年前から心理学をちゃんと学べるようになったので、精神療法と不思議な東洋の宗教“禅”との関係を僕は卒業論文のテーマにすることができた。禅の瞑想を実際体験したことのない僕の論文は、禅の関連書物と現代心理学の文献に基づく評論のようなものだったが。
 大学時代、僕は毎日こんなふうに教会に通った。これでよいのだと静かに納得していた。僕にとって、心理学も仏教も、世界観探求のためのある種の道程だった。
 その後、信仰の自由の新時代をむかえ、教会の建物内には雑誌閲覧室と音楽ライブラリーが造られた。今は現代の主神のひとり、情報がそこに住んでいる。教会の一部は大学のコンピューター・センターとなった。